若者こそ昭和的価値観を変える先頭に立て/0113号
●「3年で辞める」若者はエリートである
城繁幸氏は、その前著『若者はなぜ3年でやめるのか』(光文社新書)にお
いて、せっかく目標の企業に入社した若者がわずか3年で辞めていく実態を客
観的に指摘しています。そして、城繁幸氏はその理由として、次の2つを上げ
ているのです。
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1.わがままで忍耐不足な若者が多いこと
2.転職市場の成熟という環境要因がある
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ここで留意しなければならないことは、ここでいう「3年で辞める」若者と
は、大企業が採用を決めるほど優秀な若者のことであるということです。彼ら
は最初からやりたい仕事というものを持っており、少しでも仕事のミスマッチ
があると、すぐ辞めようとするのです。
昔であれば、仕事が自分に合わないからといっても、なかなか自分に合う仕
事が見つかるものではなかったのですが、現代ではネット上に転職市場が立ち
上がっていて、優秀な人材であれば自分に合う仕事が見つけられるのです。だ
から簡単に辞めてしまうのです。
ところで、2008年春卒業の大卒者に対する求人倍率は2.14 倍という
超売り手市場だったそうです。これは仮に就職を希望する大卒者を企業が全部
採用しても企業の求人需要は半分も満たせないことになります。そのせいか、
3年どころか入社初日から退職者が多く出るという不可解な現象まで起こって
いるのです。こういう社会的常識をわきまえない新人は少なくとも城繁幸氏の
いうところの「3年で辞める」若者ではないのです。
「3年でやめる」若者に対して、城繁幸風にいうと昭和的価値観にどっぷり
とつかった年配の管理職は、「最近の若者は辛抱が足りない。若いうちは仕事
を選ばないで何でもやるべきだ。若いときのそういう苦労はやがて自分の血と
なり、肉となる」といって苦言を呈するのがつねです。
年配者の立場で考えると、当然の指摘であるように思えますが、城繁幸氏に
いわせると、それは昭和的価値観からくる時代遅れの考え方であり、依然とし
てそういう価値観に支配されている大企業の人や組織や制度が根を張っている
からこそ優秀な若者に逃げられるのだといっているのです。
城繁幸氏は、前著で「昭和的価値観」とひとくくりにして呼んでいたものを
22の具体的な価値観としてあらわし、それぞれに関連付けて、それとは違う
行動をする若者の意見を紹介しています。(「INTEC FORUM」/ 第112号)
略歴によると、城繁幸氏は1937年生まれで現在35歳です。東大法学部
を卒業して大手企業に入社して人事部に配属され、新人事制度導入直後からそ
の運営に携わる経歴を持つ、典型的な企業エリートです。彼は、「3年で職場
に見切りをつける」若者の世代を代表する旗手として、依然として昭和的価値
観に支配されている大企業の人や組織や制度などに対して新著で反論を展開し
ているのです。
●若者こそ昭和的価値観を変える先頭に立つべきである
既に平成は20年にもなるのに、いまだに多くの企業で昭和の時代から続く
風習や決まりごとや働き方が定着しているのです。その証拠に社会経験のない
若者――とくにエリートは、誰にいわれたわけでもないのに歴史ある大企業の
門戸を叩くのです。この傾向は昔からかわっていないのです。
ちなみに2007年就職人気ランキング上位10社のうち実に6社が15年
前のバブル期とまったく同じなのです。しかし、その先に待っているのは、エ
リートでもセレブでもないただの勤労者であり、やがて彼らはものいわぬサラ
リーマンと化していく――城繁幸氏はこういっているのです。
城繁幸氏が社会に出たのは1995年――バブルが崩壊し、企業の雇用形態
に大変動が起き始めた時期に当たります。従来の年功序列、終身雇用制の賃金
体系では企業は立ち行かなくなり、新しい模索をはじめた時代に城氏は社会に
出ていかざるを得なかったのです。だからこそ、企業人としての自分の生き方
に強い問題意識をもったものと思われます。
しかし、城繁幸氏の考え方に納得がいかない年配者は多いのです。その疑問
は、大別すると次の4つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
1.昭和的価値観は昔からこの国に伝えられてきた日本人としての規範や精
神のありようを示したものであり、必ずしも悪いものばかりではない。
2.自分のやりたいこと、できること、すべきこと――この3つを一致させ
ることが必要であるが、そのためには入った職場で10年以上頑張る。
3.入社した企業には何かの縁があるのでその縁は大事にすべきだ。もし、
良くない昭和的価値観があるなら、それを変える努力をすべきである。
4.優秀な若者こそ自分に合わないからといって企業から逃げ出さずに、そ
の職場に腰を据えて新しい価値観を作るために先頭に立つべきである。
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3年で辞めて、それが真にプラスになった人は一握りです。しかし、失敗し
た人も何かを掴んで成長していきます。そういうかつての若者の現在の意識は
この本を通じて知ることができます。一読の価値はあります。 以上
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